いじめ事例研修では、謝罪の会を行い、対応をしてきたのに、いじめが収まらず、エスカレートしてくものがあります。なぜ、そうなるのでしょうか?これはあくまで私の経験からの話なのでそれが正解かどうかはわかりません。ただ、今までの経験から予測できる指導の甘い部分について話したいと思います。
●指導が入らない謝罪の会
問題行動やいじめなどで加害者側の子どもと被害者側の子どもがいた場合に、学校では謝罪の会というのを行います。しかし、謝罪の会を行ったのに、問題が解決しない場合があります。なぜか?いろいろ原因が考えられます。
①加害者側が先生の前だけ誤ればいいと考える場合
これはよくあることです。つまり加害者側が口では謝るけど、反省をしていない場合です。どうせ謝れば許してもらえるだろうという甘い考えがあるのではないかと推測します。
②被害者側に問題がある場合
問題行動やいじめでは加害者側の行為にクローズアップがされ、被害者側の状況はあまり表にでてきません。教師をしていると被害者側にも何らかの問題がある場合に気づきます。加害者が嫌がることを言ったりしたりする場合。いじめられても楽しそうに近づく場合など、自ら問題を回避することをしないで加害者側の子どもとかかわる場合があります。内心では嫌な思いをしているのですが。
③謝罪の会自体が謝罪の会になっていない場合
学校で行われる謝罪の会では子どもから事情を聴き、何がよくなかったのかを考えさせ、教師側から指導を行い、謝罪をさせます。この時に加害者側の言い分も聞くため、被害者側の落ち度を認めることになります。(いじめの指導では加害者側の行為のみを指導することが基本)その後、電話でそれぞれの保護者へ連絡をします。これで収まる場合もありますが、繰り返される場合もあります。なぜか、電話で事実を伝えた後、加害者側の保護者は必ず、自分の子どもに「なんでそんなことやったの」と聞きます。子どもは「だって○○君だって○○をしてきたから」と言い訳をします。すると「そう、だったら仕方ないわね」と保護者が叱られない場合もあります。おそらくこのようなやり取りがあると問題は繰り返されます。ではどのように対応するとよいでしょうか?
★学校は学校、家は家の指導では弱い
「学校で指導しました。家でもお話ください。」という対応がいがいと多いと思います。これでもいい場合もありますが、教師と保護者がそれぞれで指導をするのと、教師と保護者が一緒に話をする場合では、児童・生徒にとってはインパクトが違います。なぜなら、子どもは家と学校の姿が違うからです。教師と子どもの関係。親と子どもの関係があり、それぞれで違う顔を見せます。また、自分の都合のいいように話を伝えます。しかし、教師と保護者が一緒に話をするとごまかしがききません。親と教師が顔を合わせるというだけで、子どもは緊張します。何か言われないだろうか?家での様子や学校での様子、それだけで不安になります。経験上、2倍の効果でななく、何十倍の効果があるように思います。ただし、保護者に来てもらうにはそれなりの理由が必要です。
☆保護者と児童・生徒を一同に集めた謝罪の会を開くこと
文部科学省のいじめ事例での対応の例や学校でよくやられる問題行動の対応の多くは、学校で子ども同士の謝罪の会を開き、その後、それぞれの保護者へ電話などで事実を伝えるというものです。多くの場合、子ども同士の謝罪の会はそれなりの意味がありますが、何度指導しても繰り返される場合は方法を変える必要があります。おそらく加害児童・生徒にとっては謝れば済むという甘い考えがあるのではないかと推測します。ここ、一番効果を発揮するのが加害児童・生徒の保護者と被害児童・生徒の保護者を一同に集めて謝罪の会を開くことです。この際、大切なポイントは校長先生にも同席してもらい。会の最後に指導をしてもらうことです。いじめなどの重大事案については教育委員会から生徒指導担当の先生に来てもらい、最後に指導をしてもらうことです。この意図は加害児童・生徒にことの重大さをわかってもらうためです。また、場所は校長室など、普段、児童・生徒が気軽に入ることのできない場所があれば一番効果的です。
〇謝罪の会を始めるのにあたって
ここで絶対にさけなければならないことは、保護者同士が喧嘩になり物別れに終わることです。それを防ぐには事前にそれぞれの保護者へ十分な説明が必要です。そのために必要なことがあります。一つ目に学校と保護者との信頼関係を築いていくこと。特に問題を繰り返す児童や生徒の保護者は「また、何かやったのか」というように精神的に追い込まれている場合があります。そういう子どもこそ、日頃から声をかけ、保護者へいい姿を伝えたり、頑張っている様子を伝えたりして信頼関係を築いていくことが必要です。電話がかかってくるといつも苦情ばかりでは電話に出る気にもなりませんし、電話での対応もそっけなくなっていきます。日頃からの信頼関係の構築に気を配ることが事件対応に力を発揮します。2つ目に客観的事実をできるだけ多く把握していくことです。特に加害者側の保護者にすると「うちの子がなぜそんなことをやったのか」「本当にそんなことをしたのか」「何か理由があるのではないか」などと理由を聞きたくなります。それに応えるだけの事実や理由を把握することはとても大切なことです。ここで、学校側は「よくわかりませんが」なとど言っていては。何のために謝りに学校にいくのか疑問をいだくことになります。いじめの場合、多くの子ども達が知っている場合があるので他の子ども達からの事実確認を十分に行うことが必要です。3つ目に被害者側、加害者側のそれぞれの保護者の気持ちに寄り添った対応が必要です。若いお父さんやお母さんは正直、子どもの育て方が間違っていないかと不安をもたれます。特に問題行動を繰り返す場合、自分の育て方がよくなかったのか悩まれます。その気持ちに寄り添うことで事件解決に向かう場合が多いです。ここでは若い先生より子育ての経験のある先生の出番です。教師と保護者という関係より、子どもを育てる同じ大人としての気持ちに寄り添った対応が大切です。
〇謝罪の会の進め方
①席次
場所の大きさもありますが、体形はロの字で、被害者側の子どもと保護者、加害者側の子どもと保護者が向かいあうように座ります。(できれば加害者側の保護者と子どもには10分ほど早く来てもらい待っている状況が望ましい)奥に校長先生や教育委員会の先生。反対側に担任、学年主任、生徒指導主事が座り。生徒指導が司会を行います。
②時間
基本30分以上60分以内が望ましいと思われます。理由はわかりまえんが、経験上、これぐらいが冷静な話し合いを行うのに適していると感じます。短すぎてもよくりませんし、長すぎてもよくないように思います。
③会の流れ
この会の大切なことは事実の確認と謝罪が中心ですが、やはり加害者側の保護者が謝ることが出口になるので、そうなるように進めなければなりません。 1,事実確認をする。これはそれぞれの子どもにも保護者にも事前に確認をしているのですが、全員がそろったところで生徒指導が中心となり事実を確認します。その時、それぞれの子どもや担任からも状況を確認します。ここで事実を共有することが大切です。生徒指導は時系列に事実確認を行い「〇〇でまちがいないかな」と子どもに確認していきます。これをすることで後から「それは違う」といった食い違いをなくすことにつながります。2。被害者側の子どもの気持ちを聞く。「その時どんな気持ちだった?」などと苦しかった胸の内を話してもらいます。3、加害者側の子どもの気持ちを聞く「○○君、○○さんの気持ちを聞いてどう思った?」4,被害者側の保護者の方の気持ちを聞く「こんなことになり大変申し訳ありませんでした」と生徒指導が謝罪の言葉をいい「今のお気持ちをお聞かせください」といって親として辛かった思いを語ってもらいます。「ありがとうございました。我々の力不足で○○君に辛い思いをさせて申し訳ない気持ちです」といって学校側の落ち度を謝る必要があります。5.「被害者側の○○さんお母さん(おとうさんの気持ちわかったかな。ではここでもう一度しっかり謝ってけじめをつけようか」と言って、加害者側の子どもと被害者側の子どもを立たせて謝罪をさせます。 6,加害者側の保護者へ「今日は来ていただきありがとうございました。今のお気持ちをおきかせください」7,校長先生・教育委員会の先生に話をしてもらう。8,こういうことはあってはならないことなのですが、学校としてもできるだけの注意をしますが全てを見ることには限界があります。二度とあってはならないことなのですが、その後、気になることがありましたら、いつでもかまいません、ご連絡をいただけるとありがたいです」と言ってしめくくり、被害者側の保護者と子どもに帰ってもらいます。
謝罪の会終了後の加害者側への指導
被害者側の保護者と子どもを先に帰ってもらったあとに加害者側への指導を行います。実はこれが一番大切です。単に謝るだけでは学校としての意味がありません。学校は教育の場です。つまり、反省しているこの時が指導のチャンスなのです。1.「今日は来ていただきありがとうございました」と保護者にお礼をいい、2「今日どうしておとうさん、お母さんがきてくれたのかな」と子どもに聞きます。子どもは「僕が悪いことをしたから」「僕が○○君をいじめたから」などと応えると思います。「それもあるけど、実は今日おとうさんおかあさんが来てくれた理由はね。君たちのことが大切だからだよ」保護者として子どもを心配する気持ちに触れます。「君たちの親だから、子どものために今日、謝りにきてくれたんだよ。そんなお父さんやお母さんに心配をかけてはいけないと思うよ」少し間をとります。「でも○○君だって、今回の件はよくなかったけど、けっして悪い子ではないこては先生たちは知っているよ」(やった事実は指導しますが、その子自身を否定はしない)ここで担任や学年主任に日頃の様子で頑張っているいい姿をいってもらう。「こんなにいい姿があるからきっと自分を変えることができると思うよ」このあと、具体的に何をかんばるのか、生活をどう変えていくのかを担任と話し合いをしてもらい。約束づくりをします。「明日からの頑張りをきたいしてるからね」と言って終了となります。
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