ついに今年から定年延長が始まりました。令和6年3月末で60歳になった職員は1年の延長となり、来年は2年、その次は3年、最終的には5年まで延長が決まっています。では、定年延長で何がおきているのかその現状について話をします。
教員採用試験の倍率が回復?
私の住む県の教員採用試験ではここ数年、2倍を切り、1.5倍ぐらいで採用試験が行われていました。受ければ、3分の2は合格する状況です。しかし、昨年度は久しぶりに2倍をこえ、倍率もよくなったと新聞報道がありました。しかし、実際、受験者数はさほど変わっていません。むしろ減っています。ではなぜ倍率がよくなったのか、それは定年延長が始まったからです。従来なら60歳で退職する人が今年度は1年延長となるので、それだけ職員数を確保できたということになります。教員を続けたいと思っている人にとってはとてもいい制度なのですが、やめたいと思っている職員にとっては、結構迷惑な制度となっています。その具艇的な中身を話します。
退職金が200万から300万円減る?
これは、マスコミでは報道されていないことなのですが、実は定年延長は本人の希望によらず、定年が延長される制度です。つまり60歳になり、辞めるといった職員は定年退職ではなく、自己都合退職扱いとなり、定年退職でもらえるはずの退職金が満額がもらえなくなります。都道府県や役職によって違いはありますが、ざっくり200万から300万円ぐらい減額となるようです。これが、60歳で辞めたいと思っている職員にとって迷惑な話になります。いやいや定年延長する職員も何人もいると思います。では定年延長により学校ではどういったことが起きているでしょうか?
担任をいやがる職員と初任者の担任もち
定年延長により職員数は確保できつつあるようですが、今年の状況をみていると、一番影響をうけているのが、初任者です。どういうことかというと、特に、中学校の場合、初任者は担任を持たせず、フリーの職員として採用されることが多くありました。中学校の場合、規模にもよりますが、学年のクラス数が4から5クラスぐらいの学校では各学年にフリーの職員が一人は配置されます。今までは初任者はフリーとして配置し、そこで1年間いろいろと指導を受けることとなっていました。ところが、定年延長の職員の多くは担任は持ちたくないとか、授業だけの指導にしてくれとか、いろいろと注文を付けます。ましてや元校長や元教頭のように役職のある職員が定年延長で配置された場合、担任を持たせることは難しくなります。そこでしわ寄せが来るのが初任者です。統計をとったわけではないので、正確な数字はわかりませんが、私の知っている人からの情報を集約すると、おそらく殆どの初任者の多くは今年、いきなり担任をもってスタートしているようです。
これから予想される課題
定年延長により、職員数は確保され、表面上の数字は埋まっていくと思われます。しかし、初任者の多くは経験値も低く、いきなり担任を持つとなるとかなり苦しくなると予想されます。したがって、教員の離職者が増加する傾向なると思います。教員は離職率の低い仕事なんですが、学級がうまくいかなかったり、保護者からのクレームで心が病んだりと精神的に追い詰められると、辞める職員が増える可能性があります。すると、フリーの定年延長の職員が急遽担任をもつことになるのですが、年齢がいっていることもあり、かなり厳しい状況が予想されます。60歳をすぎても元気に担任をもっていらっしゃる先生もいますが、多くはずっと担任をやってきた職員が多いと思います。学年主任や教務主任、ましてや管理職でしばらく担任をやってきていない職員がうまくやれるかは疑問に思います。
教員の魅力をひろめることが教員不足の解決へ
定年延長は今のこの国にとって、労働人口を確保する上で仕方のない対策かもしれません。しかし、教員不足を解消するためには教員の魅力を広める必要があると思います。教育実習では指導案づくりより、子ども達と一緒に何かを計画して楽しいことをやって、本当に教員になりたい学生を増やすことが必要だと思います。いろいろな考えもあると思いますが、この国の将来を担う子ども達を育てる上で、教員の確保は切実な問題だと言えます。
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