生徒指導についての定義はいろいろあり、文部科学省からでている生徒指導提要ではかなり広範囲、つまり子どもを指導する全ての過程を生徒指導ととらえ、説明がされています。また、生活指導との区別もあいまいで、どちらも子どもを育てるという点では違いはありませんが、あえて若い先生方が子ども達を指導する上で、知って欲しい違いとして定義します。これは私なりの考えですから、教員採用試験ではこの定義はつかわないでください。
◆生徒指導とは
一言でいうと、子ども理解に基づく個への指導です。
◆生活指導とは
学級、学年などの規律を作るための集団への指導です。
☆生徒指導について
生徒指導というと、問題を起こした子どもたちに対する対応だと考えがちですが、それだけではなく、その子への教育的アプローチを前提とした対応が必要です。例えば、勉強に集中できない子が注意をされて、いら立って物を壊したり、誰かを傷つけたりしたとします。ここでの対応は物を壊したこと、誰かを傷つけたことへの反省をさせることは必要です。ただ、そこで終わるのではなく、自分の生活を見つめさせ、失敗からこれからの生活へどう生かすかを考えていくことが大切です。厳しく叱って反省しなさいでは何の意味もありません。指導を受けた方はただ、怒られた。嫌な記憶しかのこりません。失敗から何を学び、これからの生活にどう生かしていくのかを考えさせることが必要です。やってしまった行為からその子の今後について指導していくことが生徒指導には必要になります。
生徒指導での注意点
①子どもとの信頼関係に基づく指導をする
その子と教師との関係づくりが大切になってきます。大人だって嫌いな相手から注意されたら素直に聞くことはできません。子どもならなおさらです。信頼関係に基づき、その子の今後を考えた上で指導をすすめることが大切だと思います。
② やった行為を指導してもその子個人を否定しない
子どもはいろいろ失敗やトラブルを起こしますが、その際、やった事実へは厳しく指導しても、その子の人格や人間性を否定しないことは言うまでもありません。その上でこの失敗からこれからの生き方を考えさせる指導が大切だと考えます。
③子ども理解に基づく指導をする
発達障がいの子どもや家庭環境の複雑な子どもなど、本人ではどうすることのできないこともあります。教師はそうした状況を踏まえた上で、その子にとって何が必要なのかを考えて指導する必要があります。理解力のとほしい子どもに難しい説教をしても退屈なだけです。ここでやはりその個に応じた対応が求められます。わかりやすくかみ砕いて話した方がいい場合。自分自身で考え成長を促した方がいい場合など、子どもを理解した上での指導が大切になります。そのためには日頃から子どもたち一人ひとりを理解し状況を把握する必要があります。
☆生活指導について
生活指導とは、集団生活をおくる上での規律やルールづくりだと考えます。生徒指導が上手な先生方の多くは、子どもに寄り添い、信頼関係をつくり、その上で良し悪しをわからせることが大切だと言われます。頭ごなしに叱ることはよくないと考えています。このこと自体は否定はしないのですが、子ども達と信頼関係があり、いい先生と言われる先生の学級に起こりガチなのが、どことなく規律がなく、だらだらとした雰囲気です。それは学級での規律やルールづくりが弱いのだと考えます。時間を守る。掃除をする。係の仕事をするなど学校にはいくつものルールが存在します。これは学級での規律ですから、遅刻したからと言って、今の時代、罰を与えることはありません。授業中の私語をしたからと言って大きな問題にもなりません。どこなく落ち着かないな、集中できていないなといった学級になりやすいのはやはり、学級での規律が弱いからです。一部のまじめな子ども達が頑張ってもこの雰囲気を変えることは難しいです。そのためには教師はある程度、厳しく、学級全体を叱る必要があります。時間を守れなかった時に体調が悪くて保健室に行っていたなどの理由はある時もありますが、何となくおしゃべりをしていて遅れるなど気のゆるみからの乱れについては叱らなければなりません。全体を指導することで規律が生まれます。子どもとの信頼関係は確かに大切ですが、だからと言って教師は遠慮していては学級経営は成り立ちません。言うべき時は言い、学級でのルール作りは必ず必要になってきます。
生活指導での注意点
学級でのルールづくりはあくまで、学校独自のものです。ですから時代ととものそのルールも変えなけらばなりません。テレビやマスコミで問題になっている校則についてもそうです。時代が変わればそれに合わせてルールも変更しなければなりません。例えば4時禁、これは早帰りの時に、4時までは家で勉強しましょうといったものでしたが、今は、家に帰ってまで学校のルールを押し付けるのかといった考えが主流で、多くの学校ではこのルールはなくなりました。置き勉も以前は厳しく指導をされましたが、特に、小学校では子どもにこんなに多くのものを持たせていいのかといった考えが広まり、今は自宅学習で必要のない教科書や副読本は学校に置いていいことになりました。学級での規律づくりついても、時代の流れとともに変えていく必要があります。
生徒指導と生活指導
生徒指導と生活指導の違いを私なりの考えを述べましたが、ここで問題になってくるのが、この両者がぶつかる点です。発達障がいをもった子どもでどうしても整理整頓が苦手の子がいたとします。生徒指導上、個に応じた対応に求められますから、教師側は仕方がないと考えます。一方、生活指導では全体の規律づくりのため、整理整頓をしなさいと指導をします。ここで指導に矛盾が生じます。あなたならどうします?学校ではこうしたことがよく起きます。教師としての判断が求められるところです。正解はありません。多くの先生方は全体へは整理整頓を指導し、できない子にはある程度要求をさげます。特別に荷物置き用の箱を用意したり、ロッカーの近い席にしたりして一律に指導はしません。こうした合理的配慮は今の時代、当たり前になっています。他の子ども達へは発達障がいという言葉はつかいませんが、ある程度説明をして納得してもらうしかありません。ここにも教師の力量が問われる所だと考えます。
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