進路指導について、最近の傾向は二極化が進んでいるように思います。点数の高いグループと平均より下のグループに分かれる気がします。この二極化は偏差値をもとにした進路指導では無理があると思います。二極化が進むと偏差値があまり意味がない話をします。偏差値とは平均点や中央値を基準にして、そこからどれぐらい離れているかを表したものなので二極化が進んでいる現在の状況ではあまり意味がなくなる理由を説明します。
極端な例で説明します
3つの高校があるとします。合格ラインをA高が400点(500点満点)B高が300点、C高が200点だとします。受験生が10人います。5人は200点とれます、5人は400点とれます、と仮定すると、平均点は300点になります。偏差値は300点が50になり400点の子はそれより上になり200点の子はそれより下になります。ここで進路指導をする時、偏差値で考えれば400点取っている子はA高に合格し、200点の子はB高に不合格になります。しかし、各高校の定員が3人だとします。すると二極化の受験生はどうなるかというと、400点をとっている5人のうち2人はA高が不合格になります。200点の5人でも3人はB高に合格することができるのです。つまり400点をとっているグループにとって偏差値など関係ないのです。400点を取っている5人の中での競争になります。逆にB高はいくら合格ラインを300点といって、定員割れを起こしてしまえばそれ以下の点数でも合格することになります。
現実の進路指導でおきていること
先ほどの例はわかりやするするために極端な例をだしましたが、現在の進路指導でもこの二極化が問題になっています。以前は学校のランク順に人数が平均に分かれていたのですが、上位の学校が大幅に定員をオーバーすると、結果として上位学校から多くの不合格者がでます。すると、中間の学校へ下位グループの受験生が繰り上げられ合格します。するとそれより点数の下の高校では定員割れを起こすことになります。結果、私立高校へ流れる生徒が多くなり、公立高校が次第になくなっていきます。公立高校は定員割れが続くと、募集定員を少なくしていきますから、結果、点数のとれない生徒の行く高校がなくなっていきます、そこで現在は通信制の高校が数多く存在し、そこへいく生徒が多くなっています。
なぜ 昔と今ではこんなに違ってきているのか
一言でいうと時代が変わったとしか言いようがありません。具体的にどう変わったのか?進路指導の仕方が変わったのです。昭和から平成のはじめまでは県内で統一テストのようなものが行われ、そのデータをもとに合格できる高校へ受験生を振り分けていたそうです。あくまで聞いた話なのでどこまでが事実かわかりません。この指導だと不合格者は極端に減ります。なぜならば定員をオバーしないように中学校が調整するからです。統一テストをもとに、学校のランク順に中学校で割り振られるので、高校のレベルは変わりませんし、どんなに私立高校が頑張っても上位の受験生が入ってくることはありません。当時、合格者は新聞で全員発表されていたので、保護者としても不合格になることは嫌がり世間体を気にするあまり合格さえできればという考え方があったようです。
転機となったのは中学校の進路指導への保護者の不満?
ここからはニュースでの情報をもとに推測の話になりますので、どこまで事実はかわりませんが、ある程度説明がつくので、聞いた話を書きます。ある中学校で統一テストをもとに進路指導がされていました。しかし、ある保護者がどうしても上位の高校の受験を希望したようです。今であればどうぞ受けてくださいとなるのですが、当時、どういう指導がされたのかわかりませんが、おそらく統一テストの点数が○○点なので受からないとか言ったのではないかと思います。どうしても上位学校へ行かせたいその保護者が納得せず、その指導はおかしいと訴えを起こしたのか?マスコミに言ったのかわかりませんが問題になりました。何が問題か?公立中学校が業者の行ったテストのデータをもとに進路指導をしていたこと。受験生の意志を尊重せず受験学校を決めていたことなどが問題となりました。これを受けて某公共放送から全国の中学校へ問い合わせがあったとかなかったか?記憶にあるのはニュース報道で調査した結果が放送され、中学校の進路指導の仕方が問われました。以後、校内の実力テストも期末テスト同様、学校の教員が作ることになったそうです。また、統一テストによる進路指導も廃止になりました。
私立高校の戦略
この流れを私立高校は黙ってみてはいませんでした。チャンスととらえたかどうかわかりませんが、大学進学のための特別コースを設置し、公立高校を不合格になっても大学進学を目指せる学校であることを宣伝しました。また、合格者の上位の子は特待生として授業料免除などを行いました。特待生になった子は多少無理をしても上位の高校を受検します。私立高校の思惑どおり、公立高校の上位の受験生が不合格となり進学コースに点数のとれる子が集まってきました。さらに、予備校なみのカリキュラムで授業を進め、国立大学への合格者がでるようになります。それが相乗効果で今までは見向きをされなかった私立高校への関心が高まり、普通に優秀な受験生が集まりだします。さらに、知名度があがってくると今度は私立中学校を設置し、小学校からより優秀な子を集めたのです。やがて、この流れと少子化の影響で公立高校の定員割れがおこり、公立高校のいくつかが廃校となりました。
保護者の意識の変化
個人情報の観点から今では高校の合格者を新聞で発表することもなくなりました。また、保護者の年代もかわり、私立高校へのイメージがかわりました。今では考えられませんが、過渡期の時期ではやはり私立高校への偏見もあり、おじいちゃん、おはあちゃんが反対しているからとか、何がなんでも公立高校といった考え方も残っていました。しかし、時代とともに、私立高校でも○○高校を合格していれば、無理してでも公立の上位高校を受検するとか、逆に点数の下位の公立高校へ行くぐらいなら、私立高校の○○へ行ったほうがいいというように保護者の意識も変化してきました。その結果、公立高校の上位学校へ受験生が集中し、下位の高校は定員がギリギリが定員割れを起こすことにつながったのです。公立高校も点数での上位高校と下位高校の二極化がおこり、中間高校がおそらく減っているように思います。これは私の県での話なので、都市部ではもっとそれが進み、私立高校の方が難しいところが多いように思います。
中学校では進路指導をどう進めるのか?
昔はゲームをすると馬鹿になると言われたことがあります。インベーダーゲームが流行ったころ、中学生がゲームコーナーに行くことは不良のやることで、校則で禁止されていました。しかし、ゲームは今ではEスポーツといい、世界大会まで開かれています。優勝すれば、1億円もの大金が手に入ります。オリンピックの競技にするかどうかまで検討がなされ、時代は変わりつつあります。通信制の高校も数多く存在し、子ども達の個性にあった高校が出てきました。何が言いたいのかというと、偏差値だけに頼った指導はもはや限界があるということです。大学に行くために進学校に行くという考えもありますが、今では商業高校や工業高校も推薦制度が充実し、大学への進学の道が開かれました。私の身近の例でいうと工業高校出身で大学へ進み、教員免許をとり、教師になった人がいます。よく、中学校では自分の将来を考えて高校を選びなさいといいます。その通りなのですが、15歳の子どもに将来を見通すことは難しいと思います。進路は変わります。中学時代、外交官になりたいといった生徒がいましたが、今は弁護士になっていますし、先ほどの例のように工業高校を出身の社会科教師もいます。自分がやりたいこと、将来の夢がある子はその道へ進めばいいと思います。ただ、とりあえず高校へ行きたいと言う子には、いろいろな将来の道があることを示してやることが大切だと思います。その上で進路選択をしてもらい、進路決定へつなげてほしいと思います。何がなんでも○○高校しかないといことはありません。いくらでも修正ができることを示し、もう少し、気楽に進路選択を進めてほしいと思います。
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