小学校の教科担任制の現状

先日、テレビのニュースで小学校での教科担任制を現在実施の5,6年生から3,4年生へ拡大する方向で報道がされていました。教科担任制の現状、そして教員の負担について話したいと思います。

◆教科担任制と教員不足はあまり関係がない?

テレビでは教員不足が4月より9月のほうが1.3倍多くなったと報じていました。教科担任制にすると、教師の空き時間ができ、事務仕事もそこでできるので、教科担任制を拡充すべきだという話でしたが?ちょっとまってください。教科担任制で教師の空き時間がふえるのですか?この報道に疑問があります。ではだれがその先生の代わりに授業をするのですか?やるのは他の教師が授業をするのですよ。教科担任制と教師の空き時間は全く別の話です。今までも空き時間をつくるために別の教師がその先生のクラスの授業を受け持ったり、別の職員が事務仕事を肩代わりしたりして負担軽減に努めてきました。ただ、今、問題になっているのが教師不足です。通常、必要な教師がいない状態で他の教師にしわ寄せがいっているのが今の学校の現実なのです。教科担任をする教師はどこから連れてくるか?普通に考えればわかることです。教員不足で教科担任制をやっても、1組の国語を2組の先生がやり、2組の算数を3組の先生がやり、6年生の体育を5年生の先生がやり・・・。といったぐわいに、限られた人数で授業をうめなければならないのです。つまり、ある先生の空き時間の間、誰か他の先生が授業をしているので、トータル、±ゼロになります。教師を増やさないかぎり、絶対に教師の負担は減らないのです。

◆教科担任制を完全実施している学校数は?

小学校で教科担任制を完全実施できている学校は果たしてどれぐらいあるのか?おそらく半分もないと思います。実態調整もしないで、耳障りのよい報告を真に受けて3,4年生に拡充するというのはどうなのか?もともとは子ども達の中学校でのギャップをなくすために考えられたことだと聞いていますが?小学校ではそもそも中学校のように各教科専門の先生を一人ずつ確保できていません。小学校の免許を持っているのですべての教科を教えなければならないのですが、それだけの先生を確保するのが難しいのです。各学年2クラスの学校では、どう頑張っても12人の先生しかいません。そこに、教頭や教務主任、生徒指導をいれても15人です。今は1年生から4年生は学級担任制なので、5,6年生の教員と教頭、教務、生徒指導をいれて7人です。これを教科ごとに割り振ると何とかできなくもありませんが、教頭、教務はおそらくできる時間数はかぎられているので、時間割はうまくできません。おそらく、この規模の学校では生徒指導は担任を兼ねていると思われます。すると、この状況で教科担任制を完全実施など不可能なのです。校長先生がいると言われますが、法律的に校長は授業を行ってはダメなのです。小規模校で例外な学校もありますが、原則、校長は授業をしません。この状況で完全実施など無理です。おそらく、ある教科は別の先生にやってもらって、多くは担任が授業をする部分実施の学校が多いのではないでしょうか。

◆教科担任制を完全実施の小学校

では、小学校で教科担任制の実施は無理なのか?実は私の勤めている小学校は5,6年生で完全実施をしています。規模は各クラス3クラスで、生徒指導もフリーでいます。その現状をお話します。絶対必要なのが、非正規の教員の確保です。ATといってアシスタントティチャーの先生が算数をやるとか、図工専門の先生や音楽専門の先生、英語だけを教えに来る先生など、正規ではない先生を多く確保して教科指導をしてもらっています。また、社会の授業で、中学校免許の社会の先生が4年生の担任をしているので、4年生の先生が5年生に教えに来ています。不足している教科を生徒指導や教務、教頭で分担し、5,6年生の完全実施をしています。

◆実際に教科担任制をやって、出てくる問題点

職員の確報も課題ですが、他の問題点として時間のなさです。中学校とちがい、小学校では5分休みが主流です。すると移動教室の場合、まず間に合いません。体育館から教室。教室から図工室など移動にかかる時間は5分では難しいです。では10分にすればと思いますが、低学年では10分は長いですし、帰る時間も遅くなってしまいます。時間割を組むのも大変です。一番の課題は学級で問題が起きたときに、担任は別のクラスの授業をしなければならないので、すぐに対応が難しいということです。中学校のように学年主任がフリーで生徒指導もすぐに動ける状態とは限りません。基本、担任が対応することが多いので、教科担任制をどこまで広げるかは検討が必要だと思います。

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